サービスデザイン、UXデザイン
2021/02/08
チャレンジ
このデザインプロジェクトの課題は、”新型コロナウイルスの流行に起因する現在の状況を踏まえた上で、未来の自動車購入体験のための包括的なソリューションを考えること”でした。また、アプリのような画面上での解決策にプラスして、システム全体としての問題解決を掲示するように求められました。
また、このプロジェクトはUCLA ExtensionのUser Experience Programの一環として取り組みました。チームメンバーはWensi Hu、Zachary Stewart、Alec Parezo、Keita Aoyamaの4名で、11週間かけてZoomを使ったリモートで行われました。
ミーティングやディスカッションを円滑に進めるために、誰もが安心して参加できる場を作り、チームメンバーの意見を丁寧に聞き、まとめ上げました。
タスクと成果物の管理を担当しました。作業はTrello上で行い、チームが組織的に活動できるようにし、すべての情報にいつでもアクセスできるようにしました。
Jeep Interactive(後述)アプリケーションのインタラクティブなプロトタイプをFigmaで作成しました。
週の初めに計画を立て、効率的に仕事を始められるようにし、チームメンバーの生産性を最大限に高めました。
ソリューションを導き出すまで
車を購入する際に関与する7つの主要なペルソナを想定し、初期段階で共感マップを作成しました。
その後、初期段階の仮説をすべて集め、リスクの高いもの、低いもの、確実なもの、不確実なものを基準に、Assumption Gridで重要度のランク付けを行いました。その結果、リサーチで検証すべき重要度の高い仮説が浮かび上がってきました。
• 自動車産業はサービスドリブンになっていく
• 人々は、他人との接触をできる限り制限したいと考えている
• 現在の体験の多くをオンラインに移行できる可能性がある
• 360度ビューやARによる購入体験では現地ではなく、オンライン上で車を見ることが容易になっている
リサーチの段階では、デスクリサーチを行いました。それに付け加えて、できるだけ多くのユーザーやステークホルダーに話を聞くことにしました。また、上で述べた仮説、及びデータの検証を行うために自動車販売店や自動車の売買に関わる人々の経験を直接聞き、観察することが不可欠と考えました。
今回のインタビューでは、販売店へのコールドコールや知り合いへの声かけ、複数の販売店への訪問などを行いました。
メンバー間の活動をリモート環境で共有し、効率的にインタビューを行うことは難しいだろうと予測しました。そこでチームがすべての進捗を共有、そして管理をできるようにInterview Trackerを作成しました。これにより、合計15回のインタビューを実施することができました。
また、地元の車販売店の業務の流れを調査し、新型コロナウイルスの流行を踏まえて販売店がどのように行動しているのか、顧客のオンボーディングをどのように処理しているのか、プロセス全体の効率はどうかなどを調べました。
1.自動車購入者は、実際に車を触って購入したいと考えている。
2.83%の自動車購入者は、購入プロセスの少なくとも1つのステップをオンラインで完了させたいと考えている。
3.セールスパーソンは、自動車購入者の感情を感じ取り、購入体験をよりエキサイティングにするために、直接会って話したいと考えている。
アイディエーション
私たちはリサーチで得られた洞察をもとに、車の購入者、またセールスパーソンの両方が実際に販売店で話をしたり、車に触れることを望んでいると考えました。そこから現在のユーザージャーニーの中から機会を発見するために、消費者とステークホルダーのためのジャーニーマップを作成しました。その結果、自動車購入者が販売店にいる間の自由度を高めることで、不要なやり取りを減らすことができ、車の購入をより安全に行うことができると考えました。
アイディエーションでは、できるだけ多くのアイデアを出すことに注力しました。グループで複数のアイデア出しのアクティビティを行った結果、100以上の解決策を導き出すことができました。
その中から、さらに発展させる価値のあるアイデアを投票で決定しました。結果として私たちは、ARを使った販売店での没入型の体験を開発することを選びました。その後、これが何であるか、どのように機能するかなどをより具体的にイメージするために、簡易的なアイデアスケッチを作成しました。
プロトタイピング
没入感のあるリテール体験をどのようにプロトタイプ化するかを議論していると、「そういう意味だとは思っていなかった...」や「そのようには考えていなかった...」といった言葉を何度も耳にしました。これ以上の誤解を避けるため、信頼できる唯一の情報源としてサービスブループリントを作成しました。チーム全員に各ステップを説明し、全員が同じ認識を持っていることを確認しました。
また、ARアプリケーションの詳細を伝えるために、簡単なワイヤーフレームを作成しました。これにより、アプリケーションがどのように見えるのか、どのような機能を盛り込むべきなのかをすぐに把握することができました。
購入プロセスに関する重大な疑問に直面した私たちは、再度エスノグラフィ調査を行いました。実際の購入プロセスを観察することで、私たちが求めていた洞察が得られ、プロトタイプへのアプローチ方法を検証することができました。
ユーザビリティテストへの準備
プロトタイプにいくつかの調整を行った後、忠実度を高めました。理想的には、ワイヤーフレームに変更を加える前に、ユーザビリティテストを実施したいと考えていました。しかし、テストにかけられる時間を考えると、ビジュアルとアプリの構造の両方を含むテスト結果を得るために、先にプロトタイプの忠実度を上げました。
上述の2度目のエスノグラフィ調査で得られた洞察に基づき、プロトタイプの再確認を行いました。また未来の車の購入体験をより良くするためには、どのようなデザインにすべきかを考えました。
以下に、ARアプリケーションの主な機能を紹介します。
自動車購入者が販売店に行く主な理由の一つは、購入を検討している車に試乗することです。私たちはそのプロセスを簡略化し、販売店のスタッフとの接触を最小限にすることで安全性を確保しました。
このアプリの主な目的の一つは、不必要な人間同士のやり取りを最小限にすることでした。基本的な質問に答えるAIを搭載したチャットボットをアプリに組み込むことでその目標を達成できると考えました。
車の購入者は、購入の際に車に貼ってあるステッカーに価値を見出すことがわかったので、それを模倣し、簡単にアクセスできるようにしました。
ユーザビリティテスト
プロトタイプの準備ができた段階で、今度は実際にユーザーにアプリを使ってもらい、Jeep Interactiveアプリケーションだけでなく、ユーザージャーニー全体の問題点を明らかにしようと考えました。システム全体のプロセスをテストするためのストーリーボードと合わせて、アプリケーションのユーザビリティテストを行いました。
車のステッカーに記載されている車体の情報を閲覧するタスクの成功率が低いことがわかりました。ユーザーの行動を観察した結果、ユーザーにとって車の上のタグがクリック可能に見えないことが原因であると判断しました。
解決方法として、タグの上に右シェブロンのアイコンを追加し、タグがクリック可能であることを示すようにしました。
振り返り
自分の考えやアイデアを他の人に伝えようとするとき、プロトタイピングがいかに有効であるかを改めて実感しました。時折、チームでアイデアを身振り手振りあるいは口頭で話し合っていましたが、そのたびに行き詰まってしまいました。それを解消してくれたのが、プロトタイピングによるコミュニケーションでした。そのおかげで、アイデアを素早く共有することができ、”チーム内のコミュニケーション”ではなく、”チームからユーザーへのコミュニケーション”へシフトすることができました。
私は普段から聞き役に回る事が多く、ファシリテーションが苦手だと考えていました。しかし、ファシリテーションは話すことではなく、聞くことだと学びました。チーム内での議論が白熱したときは、その度に一旦中断して、チームのメンバー1人1人が何を言いたいのかを聞いて、意見をまとめている自分がいました。またそれでもうまく行かないときは、中立的な立場から自分の意見を述べ、相手を納得させることもありました。プロジェクトが終わったときの振り返りの中で、チームメンバーからファシリテーション能力を評価していただいた際に、ファシリテーションはただ場をしきるのではなく、話を聞く力も必要なのだとわかり、自信に繋がりました。
This project was solely for educational purposes and has no affiliation with Jeep by Fiat Chrysler Automobiles US LLC.